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revolution
 
 
この度の震災により被害に遭われたみなさまの、一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
 
日野原先生からの
『ナースに贈る35のメッセージ』
著者:日野原重明 
発行所:日本看護協会出版会
 
 財団法人ライフ・プランニング・センターの理事長をしている、日野原医師が事業のひとつとして、「訪問看護ステーション千代田」を設立している。
 その中で、看護の心・患者さんに寄り添う・老いを支えるのテーマごとに、35のアドバイス(ことば)を述べている。
 ”残っているもの”を引き出すには何をすればよいかを考えることが大切ですよ。
 快適に過ごせるためには“今”が一番大切ですよ。
 ”支え”になるものをつくることで”心のカギ”を開くことができればいいね。
 看護師として患者さんやその家族とふれあう中で、悩みどのようにすればよいのかを考えている中で、誕生したことばである。
 どのことばも人として日ごろの生活の中においても、ヒントとしてつかえることばでは?!
(2012年 5月 担当:司書教諭)
 
天国の郵便局
編集:あの人への想いを綴る会
発行所:株式会社ポプラ社
 
 『徒然草』には、生老病死という言葉が記されています。人はこの世に生を受けた瞬間から命が尽きるまで、たくさんの人と出会い、様々な経験をします。
 その中で、避けては通れないものが、老いることや病いではないでしょうか。大切な人が遠くへ離れてしまった時、あなたならばどのような手紙を、天国へ届けますか?
 この本には、幼い子どもを亡くした母親が、精一杯の思いを込めて綴った手紙。生きている間に色々なことを、もっと・・・という後悔の手紙。一生懸命、前を向いて生きようとする姿を、天国の人へ向けて書いた手紙など。
 自分の今(気持ち)を素直に書いたメッセージであふれています。皆の思いを感じることで、頑張ろうという勇気が、持てますようにという願いを込めて・・・。
( 2012年 4月 担当:司書教諭 )
 
大地震にそなえる自分と大切な人を守る方法
著者:渡辺実
発行所:中経出版
 
 東日本大震災より1年。1日も早い復興ができるよう、心よりお祈り申し上げます。
 今月は、大地震が来たとき大切な人は、あなたしか守れない。絶対に生き残る!生き残らせる!1人ひとりが実践すればみんなが助かる。
(本書より抜粋)を紹介します。
 いざという時に、文明の利器携帯電話は役立たない?!など、地震の際の心構えや、日ごろから準備しておくもの。
 多くの知っておきたい知識が、習得できる本となっています。あなたは、地震に備えてどのような準備をしていますか?
 再点検を兼ねて是非読んでほしい1冊です。
( 2012年 3月 担当:司書教諭 )
 
 
ピクトさんの本
著者:内海慶一
発行所:株式会社ビー・エヌ・エヌ新社
 
 意外と知っているようで知らない各種標識は万国共通だった。言葉は通じなくとも標識で通じ合える?!
 転倒系・頭打ち系・落下系など、多種多様な標識が記された1冊です。
 外国の友人とクイズ形式で、語り合ってみませんか。きっと、「わかるー」・「あっそうか」と、納得や笑いが起こること間違いなし?
( 2012年 2月 担当:司書教諭 )
 
そして、涙は海になる
著者:須田佐智子
発行所:PHP研究所
 
 ごく普通の女の子が高校生でサーフィンと出会う。様々な大会で活躍する中、自主トレ中に生理不順となる。
 その後、子宮がんの宣告を受ける。24歳・子宮がんサーファーが遺した「最後の一滴」。
 身近に存在する病気だと、どれだけの人が知っているでしょうか。すべての女性が自分自身のことだと感じてほしい・・・。
 そんな願いを込めてこの本を紹介します!
( 2012年 1月 担当:司書教諭 )
 
新版 自然災害ハンドブック
著者:川崎深雪
発行所:株式会社山と渓谷社
 
 今年の3月11日の東日本大震災から半年以上の時が過ぎました。皆様のご冥福をはじめ、お見舞いを申し上げます。
 日本最古の『日本書紀』や『方丈記』にも、天変地異のことが記されていることや、近年では1995年の阪神淡路大震災・2004年の新潟中越地震も、記憶に残る出来事です。
 「天災は忘れた頃にやってくる」と言ったのは、高知にゆかりのある地球物理学者の寺田寅彦ですが、近い将来高知県にも南海沖地震が予測されます。「いざという時」に役立てるためにも、地震・津波・火災・火山・台風・雷・救急法に関する内容が、各章ごとに書かれメカニズムや想定される被害状況・対策方法などが、図式・イラスト・写真などで、具体的に分かりやすく本に記載されています。
 また、震災時に役立ったグッズは何だと思いますか?正解は1位懐中電灯・2位食料品・3位キッチンラップなど。今すぐ役立つ情報がたくさん記されています。
 意識(記憶)が風化する前に、今一度振り返るための参考書としてどうぞ。
( 2011年 12月 担当:司書教諭 )
 
がんばらない
著者:鎌田實
発行所:集英社
 
 医師である鎌田氏が体験を元に書かれた本で、経営に苦しむ病院に赴任してから、困難に出会いながらも、数多くの人に支えられながら、県外からも患者が訪れる病院にまで変化する過程。命とは何かを懸命に考える医師の姿が記されている。
 その中の一つ「ほろ酔い勉強会」の秘密〜お風呂に入れちゃう運動〜から。1980年頃より、高齢化社会で地域の病院として、何ができるのか考える動きが出てきた。病院職員の勉強会から始まり、社会福祉協議会のスタッフ・市の保健師・ボランティアスクールを卒業した市民が集まり、寝たきりの高齢者が、何年もお風呂に入れていない状況を知る。
 当時すでに社会福祉協議会では、入浴サービスがあったものの、実際にはサービスを知らない人、知っていても福祉のお世話になりたくないという理由から、このような現状があった。
 そこで、「お風呂に入れちゃう運動」に乗り出した。これがヒントとなりデイケアサービスの原点がスタートする。
 2000年に介護保険が導入され、たくさんのサービスが存在する。また、保健・医療・福祉は日々進化している。その基礎を知る新たな発見が、この本の中に数多くあるのではないか。
( 2011年 11月 担当:司書教諭 )
 
著者:阿刀田高 ほか
発行所:株式会社メディアパル
 
 今月は読書の秋にぴったりな本。『本からはじまる物語』を、紹介したいと思います。これは、本や本屋を舞台に描いた、18のストーリーが題材となっています。その中より一つ、「The Book Day」では、たくさんの人が思い出に残る本を、夜の世界へ(感謝の気持ち)を、旅立たせる物語です。
 本の主であった夫が家族を心配する気持ちや、名残惜しさから妻の周りをぐるぐるして、旅立ちを躊躇している本。何回も読まれてボロボロになっている絵本。同じ絵本だけど一度も開かれたことのない本。
 ここには、本の数だけの出来事が存在しています。その出来事を振り返り思い出にすることや、出会いを大切にすることで、夜の空の世界へと本を送り出すのです。
 皆さんは、このような本にもう巡りあえましたか?まだの人は、読書の秋を存分に活かして探し出してみませんか。
 ( 2011年 10月 担当:司書教諭 )
 
はたして、彼女の運命は…。

『秋の牢獄』
常川 光太郎
角川書店
 
【内容紹介】
11月7日水曜日。藍は、来る日も来る日も秋のその一日を繰り返している。大学での同じ講義、友人との同じ会話。朝がくればすべてがリセットされ、再び同じ11月7日が始まる。そんなある日、藍は、自分と同じ境遇の人々に出会い…。

まず、本の装丁の怪しげな美しさに目を奪われました。そして、本を開いた瞬間の秋の風景の広がりがとても綺麗で、風景の中に入っていけそうな気がしてきます。ぜひとも、ハードカバーで手にとってほしい本です。
この本には、「秋の牢獄」のほか二篇の短編が収録されています。通りかかった青年がある家に閉じ込められる「神家没落」。かつてリオという少女だった、幻使いの女性が主人公の「幻は夜に成長する」。三篇に共通するテーマは「囚われ」。各々にそれぞれの味があり、幻想的な神話のような物語です。

(2011年 9月  担当:司書)
 
思いを込めて、踊ります!

『夏のくじら』
大崎 梢  文藝春秋
 
【内容紹介】
いとこの多郎に誘われて、よさこい祭りを初めて踊った中学生の夏――。はたして、4年前のあの夏の心残りを果たせるのだろうか。
大学一年生になった篤史は、子どもの頃、夏休みに訪れていた父の郷里である高知に、進学を機にやってきた。よさこいへの参加は全く考えていなかったが、多郎の強い誘いに根負けし、鯨井町という町内会チームのスタッフとして手伝うことに。最初は乗り気ではなかった篤史だが…。

8月に入り、南国土佐も夏本番です。高知の夏と言えば、よさこい祭り!というわけで今月は、高知が舞台の青春小説を紹介したいと思います。
この本を読んで最初に思ったことは、「よく描けているなぁ」でした。よさこいの熱気、躍動感はもちろん、細かい事柄にいたるまで忠実に描かれていました。携帯電話で、お目当てのチームがどこで踊っているかを検索することができる「どこいこサービス」、競演場や演舞場にある給水所は寄付やボランティアの人々に支えられ運営されている等…。知っている人には当然のことでも、案外知らない人もいるのでは?と思ってしまいました。
本作は、篤史を中心にした話ですが、「よさこい祭り」を共に作り上げていく人々の物語でもあります。鳴子、衣装、音楽、振り付け、そして地方車と踊り子。数え切れない人々に支えられながら、ひとつのお祭りは作り上げられている。そして、作り上げる一人ひとりにも、それぞれの物語がある…。
そう感じさせてくれました。

(2011年 8月  担当:司書)
 
空への手紙 雲のむこうにいるあなたへ
編集者:佐藤律子
発行所:株式会社ポプラ社
 
 ふと空を見上げると一面が真っ青だった時、同じ風景を写真で発見した喜びを、皆さんへ・・・
 この本や写真が出版されるきっかけは、編集者の佐藤さんがお気に入りの童話、コルババの宛名・住所・差出人も書いていない手紙を、1年と1日かけて届けた話が、ヒントになっています。佐藤さんがコルババだったら、ちょっぴり気取って、『空への手紙』に届いたメッセージを、配達して歩きたいと感じたからです。
 佐藤さんの二男拓也君は、小児がんの闘病経験があります。この本は、亡くなった方へのメッセージを書き込む掲示板を、1冊の本として出版したものです。いのちの大切さ=生きることの様々な思いが込められています。
 皆さんの大切な人が、もし雲のむこうにいるならば、あなたも心の中で手紙を書いてみませんか?暑さの中で汗をかくのではなく、心の熱さを感じて涙する日。そんな1日があってもよいのではないでしょうか。
( 2011年 7月 担当:司書教諭 )
 
日本は、カビ王国!?

『トコトンやさしいカビの本』
カビと生活研究会 編著
日刊工業新聞社
 
雨の季節のお悩みといえば、ジメジメとした湿気。空気が重たく感じられ、人にも本にも嬉しくないものですが、今月はその湿気がだーい好きな生物、ずばり「カビ」に関する本をご紹介したいと思います。

トコトンやさしいというシリーズ名のとおり、図解入りでとても分かりやすく読み進めていくことができます。人に悪影響を及ぼすイメージの強いカビですが、ペニシリンやチーズのように私たちに恩恵をもたらしてくれる存在でもあります。カビ取り剤をむやみに使うと、余計にカビの繁殖を促す、という事実に思わず目を見張りました。カビ取り剤は最後の手段、まずはカビの性質を見抜き、予防することが先決のようです。
これを読んでカビに興味を持った方は、『もやしもん』(石川雅之)というコミックもおすすめです。こちらは、菌を見ることができる男の子を主人公にしたお話。可愛く描かれた菌たちを通して、地球上のいたる所に菌がいることをリアルに感じることができます。

(2011年 6月:司書)
 
人は死ぬと、どうなるの?

 死は肉体にだけ訪れる。・・・

『生きがいの創造』
 “生まれ変わりの科学”が人生を変える
   The Real Aim of Our Life

    福島大学教授 飯田史彦 
           PHP文庫
 
【内容紹介】

欧米では、多くの科学者たちによって研究され、さまざまな驚くべき報告がなされている、“生まれ変わりの科学”
本書はその研究成果の数々をふまえながら、「『死後の生命』や『生まれ変わり』を認めるとすれば、私たちの生き方がどのように変わっていくだろうか」という命題に迫っていく、画期的な人生論であり、いきがい論である。自分がこの世に存在する意味を深く体感させる、注目の論考。

この30年くらいの間に退行催眠という精神医学の治療法が発達してきた。催眠状態では、幼児の時の記憶のみならず、前世の記憶もよみがえるのである。何百人もの人の退行催眠や、さまざまな催眠療法研究者たちの実践に基ずく報告をまとめ、論考したもの。

( 2011 6月   担当:図書担当教員 )
 
地方(日本)を、元気に!

『県庁おもてなし課』
有川 浩
角川書店
 
【内容紹介】
人口の少ない高知を活性化させるには、たくさんの県外客に来てもらい、「外貨」(県外客のお金)を落としてもらうしかない。そこで、県をまるごとレジャーランドにして「外貨」を稼ぐ!を最終目標にした「おもてなし課」職員たち。はたしてお役所仕事を脱却し、夢実現なるか!?…そんな彼らの奮闘を描いた物語。

今年度最初に紹介する本は、高知県出身の作家、有川さんの元気いっぱい観光お役所小説です。新聞連載もされ、いまや高知を語る上で欠かせない作品となりました。
型にはまらない、まさに土佐のいっごそうの清遠さん。スケールの大きさや発想力、見習いたいです。あまりに身近で、「特別」であることに気づかない高知の魅力。再発見の連続でした。
掛水くんと多紀ちゃんの恋の行方にやきもきしつつ、高知を楽しんでもらえたらと思います。読めば、元気がもらえること間違いなし!

この作品を読んで一番ガツンと来たのは、民間感覚の大切さです。読んでいて、私自身耳が痛いなぁと思った箇所がいくつかあります。自分の都合ではなく、利用者のことを考えた図書館にせねば!と改めて気合が入りました。

有川さんは、この『県庁おもてなし課』の印税をこの度の震災に寄付されるとのことです。自粛よりもみんなが笑顔になるような消費を、という有川さんのご意見に賛同すると同時に「元気」をキーワードに本書を選ばせていただきました。


今年度より、図書係の3名が交代でHPのオススメ本を更新することになりました。どうぞ、よろしくお願い致します。

(2011年 4月  担当:司書)
 
あなたに伝えたいこと。

『ちいさな あなたへ』
アリスン・マギー(文) 
ピーター・レイノルズ(絵) 
なかがわ ちひろ(訳)
主婦の友社
 
世界中の“おかあさん”の気持ちがギューッとつまった一冊です。
母となることの喜び、そして、いつか大人になるわが子へのささやかな願いが込められたメッセージ。読み終わったとき、自然と母の顔が目に浮かびました。母がいるからこそ、今の私がある――。
当たり前だけど忘れがちなこのことを思い出させてくれました。
“お母さん”という存在は、とても偉大だなぁと思わずにはいられません。

(2010年 5月)
 
四季のある国に、生まれてよかった。

『しばわんこの和のこころ』
川浦 良枝 (絵と文)
白泉社
 
今月ご紹介する本は、四季のある国、日本に生まれたことを感謝したくなる一冊です。
和の暮らしを中心に、お花見や七夕といった日本の年中行事を分かりやすく、何よりかわいく紹介した絵本で、お茶の入れ方やお掃除の仕方といったお客さまへのおもてなしの心、手紙やお箸の作法も学べます。
テレビでアニメも放送されていたこともあり、ご存知の方も多いかもしれません。
季節の移ろいを感じ、日々の暮らしを大切に過ごす…。忙しさが続く日々では「難しい」というのが現状ですが、時には立ち止まってみることも大事だなぁと改めて思いました。

(2010年 4月)
 
『山月記』には、こんな「真実」が!

『虎と月』
柳 広司
理論社
 
【内容紹介】
4歳のとき、父は「虎」になった―。
とても信じられないが、現実のことらしい。
なぜ、父は虎になったのか。
いつか自分もそうなるのだろうか。
14歳になった少年は、真実を求め旅立つのだった…。

2010年最初に紹介する本は、干支にちなんだ1冊です。
『山月記』(中島 敦)という話をご存知でしょうか?
載っている教科書もあるので、習った方もいらっしゃるかもしれませんね。この『虎と月』は、人が虎になってしまうという『山月記』をもとにして描かれたものです。「人が虎に?そんなバカな!?」と思うあなたも納得の結末が待っています。
さてさて、”虎になった”という父が残した一編の漢詩。そこに秘められた「真実」とは!?

(2010年 1月)
 
今夜の夢は、どんな夢?

ドリーム・ギバー 夢紡ぐ精霊たち
ロイス・ローリー
金の星社
 
【内容紹介】
人々に幸せな夢を与えてくれる精霊。それがドリーム・ギバー。家の中にある、数々の思い出から記憶のかけらを集め、夢を紡ぐ…。
今宵も人々に、笑いと、勇気と、やすらぎを―。

今月紹介する本は、本年度の読書感想画コンクールの指定図書のひとつ『ドリーム・ギバー』です。
好奇心旺盛でちっちゃなドリーム・ギバー、リトレストがとってもかわいいファンタジー。悪夢との対決もあり、幻想的でとても美しい物語です。個人的には精霊というよりは、妖精というイメージのドリーム・ギバーたちですが、ちっちゃな妖精たちが人々に見つからないように…、という夢が広がる作品です。

あなたの初夢も、ステキな夢でありますように…。

(2009年12月)
 
読むと木村さんのリンゴが食べたくなります!

『奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』

石川 拓治
NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班=監修
幻冬舎
 
【内容紹介】
「農薬もリンゴも使わず、リンゴをたわわに実らせる…。」
リンゴを育てるためには、農薬使用が大前提。その農薬を使わず、まして肥料すらまかずに育てるリンゴ農家がいるという。その技術は確立されていなかったために、ゼロからのスタート。何年も収穫できず、家族の生活をジリ貧にまで追い込み、周囲から蔑まれても、【絶対不可能】を可能にした木村秋則さんの記録。

今回ご紹介する本は、テレビ番組「プロフェッショナル」で大反響だった木村秋則さんのお話です。木村さん自身が書かれた本も多数あり、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
一介の消費者からすると、「そりゃ無農薬の方がいい」と単純に思ってしまいます。それでも「無農薬」が一般化されていない状況からすると、やはり消費者には想像も及ばない農家の方々のご苦労があると思われます。

そのような現状のなか、先の見えないゼロの状態で、無農薬栽培をはじめるのは、かなり勇気のいることだと思います。まして家族をかかえた一家の大黒柱だと、なおさらのことでしょう。子ども達に新しい服はおろか、学用品すらも満足に買ってあげられない日々…。そんな生活のなか、木村さんが無農薬栽培をあきらめようと言ったときに娘さんが激昂して言った一言がとても印象的でした。
木村さんの想いに応えたリンゴの味は、木村さんの人生そのものの味。植物だって、虫だって、人だって何だって生きているのだと、改めて感じさせてくれた作品でした。

(2009年 10月)
 
いざという時のために。

『図解 ひと目でわかる応急手当』
福井 次矢 
主婦と生活社
 
9月は防災月間です。今月はそれにちなみまして、いざと言うときモノを言う応急手当の本を紹介します。この本は、けがや病気の応急処置はもちろん、地震、海難事故だけでなく、山での遭難、落雷、雪崩、感電した人の救出、熊に遭遇したらどうする!?などなど、たくさんの項目が取り上げられています。
応急処置はイラスト入りで大変わかりやすく、巻末には全国救命救急センターや安全な暮らしに役立つホームページなどの情報も掲載されています。知っておくとかなりお役立ちな1冊です。

ちなみに、高知の休日夜間当番医をお探しの場合は、本書の206ページにもあるとおり、『こうち医療ネット』にて探すことができます。また、休日の高知新聞にも掲載されていますので、ご参考まで。

(2009年9月)
 
この夏は、一度きり。

『キツネ山の夏休み』
富安 陽子 
あかね書房
 
【あらすじ】
弥(ひさし)は、小学4年の夏休みをおばあちゃんの家で過ごすために、電車に乗って稲荷山に向かっていた。そこは、108匹のキツネに守られているという水と伝説の町。おばあちゃんと二人きりの夏かと思いきや…。いなかで過ごす夏休みにちょっぴり憧れていた少年の、ひと夏の冒険ファンタジー。

キツネや妖怪が大好きな方はぜひぜひ読んでください。そうでない方もどことなく懐かしい日本の田舎の夏休みに出会える、大変ノスタルジックな一冊です。
この本は、「子どもの時に読んですごく面白かった本です」と生徒さんに教えてもらったもので、1995年の読書感想文の課題図書だそうです。大人も子どももわくわく読める、素敵な本です。キツネのオキ丸がとても可愛く、思わずこんな子と一緒に冒険してみたい!と思ってしまいます。食いしん坊目線でいくと、稲荷最中もいいけれど、やっぱり夏季限定稲荷山名物の水まんじゅうがすごく美味しそうだなぁと思いました。

毎年毎年、夏はめぐってくるけれど、10歳の夏が一度きりなように、その年の夏はただ一度だけ。「お姉さんとよぶほどわかくないけれど、おばさんとよぶのはきのどくな感じ」(p10)という年になってしまった私ですが、ひと夏、ひと夏を大切に過ごしていきたいなと思ったものでした。

(2009年8月)
 
屋根から落ちたら、2児のパパ!?

『ステップファザー・ステップ ―屋根から落ちてきたお父さんー』
宮部 みゆき 
講談社 (青い鳥文庫)
 
【あらすじ】
哲(さとし)と直(ただし)は中学生の双子の兄弟。両親はそれぞれに駆け落ちして家出中。そんなある日、2人の住む家にプロの泥棒が”落ちてきた!” 2人は泥棒を父親代わりにすることに。嫌々ながらも父親役を引き受けた泥棒と双子の3人の周りに起きる不思議な事件やできごとを綴ったほんわかミステリー。

ステップファザーとは、義理のお父さんのことです。彼らの両親は、一度にそれぞれが駆け落ちしてしまい、家には兄弟2人きり。目下、保護者を探していた2人にとって好都合な人材が屋根から落ちてきたら…。この双子、なかなか抜け目無く泥棒を無理やり自分たちの”お父さん”にします。泥棒の方も何のかんの言いつつも双子のことを気にかけ可愛がるように。本当の父親ではないにしろ、気持ちの上では立派なお父さんです。なお、この青い鳥文庫は、講談社文庫『ステップファザー・ステップ』より6編選ばれたものです。宮部作品を完全読破されたい方は、講談社文庫の方をお勧めします。とにかく双子がかわいい!一冊。

(2009年 6月)
 
それでも、お母さんが大好き。

『わが家の母はビョーキです』
中村 ユキ
サンマーク出版
 
【あらすじ】
ある日、母が病気になった。診断結果は統合失調症。当時、私はまだ4歳だった…。病気が理解できず、時に絶望した日々。それでも、泣いて笑って生きてきた母と娘の31年間。想いのたけがギュッとつまったコミックエッセイ。

統合失調症は、100人に1人がなる病気だそうです。患者数はガンとほとんど変わりません(75万人以上)。それほど身近な病気であるにもかかわらず、私たちはあまりよくこの病気のことを知りません。精神病ときくと、世間から白い目で見られてしまうため、あまり明るみにされなかったという現実があります。

著者である中村さんのお母さんは、中村さんがわずか4歳の時に発症しました。幼い子どもには、どれほどの肉体的・精神的負担が大きかったことだろうと思います。奇声をあげながら、自分に向かって刃物を向ける母。幼い子どもが、刃物とお金を隠さなければならない日々…。時に絶望感にさいなまれながらも、それでも、彼女は母親から離れることはありませんでした。100人に100通りあると言われるこの病気を、家族の視点で真正面から描いています。まさに百聞は一見にしかず。どうぞご一読ください。コミックエッセイで非常に読みやすく、おすすめです。

(2009年 5月)
 
桜が舞い散る中で見た、ずっとずっと昔のいつかは…。

『いつか、ずっと昔』
江國 香織(文)
荒井 良二(絵)
アートン
 
【あらすじ】
『れいこ』と浩一は、夜桜を見るため真夜中の桜並木へとやってきた。満開の桜吹雪のなかで、れいこの見たものは…。

春と言えば、やはり「桜」。
というわけで、今年も桜にまつわるお話を紹介したいと思います。この本は、江國香織さんの『いつか、ずっと昔』という短編に、絵本作家の荒井良二さんがさし絵をつけた、やや大人向けの絵本です。
桜の木の下には亡がらが…というお話があるように、不思議な妖力が宿るというイメージが強い桜。『れいこ』が夜桜の中でみた、いつかの自分、繰り返される出会いと別れ…。
私自身の「ずっと昔」は一体何だったんだろうと、遠い昔に思いをはせました。でも、なかなかに潔い『れいこ』に、過去(前世)がどうあれ、やっぱり現在(いま)が大事だなぁと感じました。昔は昔、今は今、です。
明るい日射しのなかの桜吹雪も素敵ですが、夜桜のあやしくゆらめく様も、艶やかな魅力でまた一興。その美しさを表現した絵(8・9ページ)がとても気に入ったのでご紹介させていただきました。

(2009年4月)
 
―神様からのおくりもの―

『きらきら』
谷川 俊太郎(文) 
吉川 六郎(写真)
アリス館
 
今月は、表紙の美しさに思わず手に取ってしまった1冊です。南に位置する高知ではあまりお目にかかれない「雪」。一見どれも同じように見える雪ですが、一つとして同じものはないそうです。その結晶の美しさは、まさに神様からの贈り物。雪の結晶の美しさと、そこから生まれた子どものようにくったくのない詩が合わさって、きらきらと輝くとても素敵な絵本です。こんな形の結晶があるなんて!という驚きとともに、その不思議さや美しさを存分に味わってください。

(2009年 1月)
 
「クリスマスの奇跡は、それを信じる人に起きる」

『赤い手袋の奇跡 ギデオンの贈りもの』
カレン・キングズベリー
集英社
 
【内容紹介】
クリスマス目前のある日、人生に絶望した孤独なホームレス、アールと出会った少女ギデオン。彼女は、彼に奇跡を信じる心を再び取り戻してもらいたいと強く願う。白血病を患いながらも、お手伝いをしてお金を貯めたギデオンは、アールに贈りものをすることにした…。奇跡を呼ぶ感動のクリスマス・ストーリー。

寒さが厳しくなってくるこの時期にぴったりの、心あったまる本です。自分の病気よりも、見ず知らずのホームレスの心を救うことを願ったギデオン。まさに彼女のあたたかい心が奇跡を起こします。アールにどんな仕打ちを受けても、彼の幸せを願い、奇跡を信じるギデオンに、何があっても一途に信じることの大切さを改めて教えてもらいました。健気なギデオンに心打たれる1冊。

ところで、ギデオンという名前を最初に見た時、一瞬「男の子?」と思ってしまったのは、私だけでしょうか。女の子の名前だと知り、ちょっと勉強になったクリスマスでした。
(2008年 12月)
 
心をこめて、「いただきます」

『食堂かたつむり』
小川 糸
ポプラ社
 
【内容紹介】
恋と家財道具一式を一度に失い、ショックのあまり声すらもなくしてしまった倫子。祖母の形見のぬか床と身一つだけになった彼女は、10年ぶりに戻った実家の離れで「食堂かたつむり」を始める。ここの料理を食べると、恋や願い事が叶うというまことしやかな噂とともに、食堂は評判になるが…。

やっぱり最後は「食欲の秋」というわけで、美味しいもの満載の本書を推薦します。この本には、たくさんの食べ物が紹介されていますが、ルクルーゼのお鍋やバーミックスなど料理好きな方には、「おっ!」と思う小物もひょっこり出てきます。登場する食べ物や料理だけでなく、黄昏色を、マーマレードたっぷりと表現しているところも、思わず「美味しそうだなぁ」と顔がにやけてしまいます。
1日1組、そのお客のためだけに用意されたメニュー。もしも私が「食堂かたつむり」に行ったら、何を出してもらえるんだろうと思いながら、本をとじました。

食べ物の記憶は、味やにおいはもちろん、楽しかったり悲しかったりした思い出とともに刻まれます。私自身、ホットケーキを見るたびに、今でも大好きな絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』と共に、幼い日のあの頃を思い出してやみません。
(2008年 11月)
 
絵でつながれた、二人の絆。

『黄色い目の魚』 
佐藤 多佳子
新潮社
 
【内容紹介】
周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許す、村田みのり。ノートの端っこにいつも誰かの似顔絵を描く木島悟。海辺の高校で出会った二人。悟は美術の授業でみのりをデッサンして以来、気がつくと彼女の表情を追っている。サッカーも絵も上手くいかず、本気になることを恐れていた悟と、家族からすら孤立していたみのりが見つけたものは…。

今月は、「芸術の秋」というわけで、絵が物語の重要なキーポイントになっている本作を選びました。
「あれ?佐藤多佳子さんってもしかして…?」と思った人もいるかもしれませんね。昨年度の本屋大賞受賞作『一瞬の風になれ』も、今回ご紹介する佐藤さんの作品です。

本作品は、みのりと悟の二人の視点が入れ替わりながら物語は進んでいきます。見ているこちらが痛々しくなるくらい周囲と溶け合わないみのりと、どこか地に足がついていない悟。「本気になって失敗して醜態をさらすのが怖い」という悟の言葉が、耳が痛いと同時にとても印象的。10代の瑞々しさ全開の青春小説です。友達以上、恋人未満のようなビミョーな関係にやきもきしつつ、楽しんでください。
(2008年 10月)
 
食の安全が問われる、今。

『食品の裏側』 安部 司 
東洋経済新報社
 
【内容紹介】
食品添加物の元トップセールスマンだった著者は、口にした食べ物の添加物を見分けることができる。現場を知る彼が語る加工食品の現実…。食品添加物の光と影。

事故米・メラミン混入など、食の安全がおびやかされている現在。わたし達は、”食べ物”に対して、あまりにも敬意を払わなくなっているのではないでしょうか。本書は、2005年に発売され、ニュースや新聞に取り上げられたこともありご存じの方もかなり多いと思います。
日頃、何気なく口にしている食べ物には、どれだけ多くの添加物が使われているのか。そして、その正体は…。
知ると思わず絶句してしまいます。そして、添加物を使う食品メーカーが一方的に悪いのではなく、その商品を選んでいるのは、わたし達消費者であること。お手軽・簡単・スピーディーという便利さの裏で、私たちが確実に失っているものについて改めて気づかされます。
”いのち”をいただくことを、もう一度見つめ直してみませんか。
(2008年 9月)
 
愛する人との未来を、あなたなら捨てられますか。

『塩狩峠』
三浦 綾子
新潮社
 
【内容紹介】
長野信夫は、武士の末えいとして祖母に厳しく育てられていた。祖母が他界したある日、父が一人の女性を連れてくる。彼女は、死んだと聞かされていた信夫の母であった。やがて成長し鉄道員となった信夫は、結納のために札幌へと向かう列車で事故に巻き込まれる。塩狩峠の頂上にさしかかった客車の連結が離れ、暴走し始めたのだ。そのとき信夫のとった行動とは…。

あまりに迷いのない行為に、正直あっけにとられました。まさか主人公がここまでするとは思いもよらなかったからです。愛する人や家族への一瞬の未練、それを振り切った強さ。我が身を顧みずここまで人のためにできるのだろうか。1人の男性の生涯を通じて、自分ならどうするか、自問自答の繰り返しでした。
この『塩狩峠』は、実は生徒さんに薦めてもらった本です。恥ずかしながらこの夏、三浦さんの本を初めて読みました。昭和の作品ですが、この本に出会えたことに感謝しつつ、まだまだ勉強不足だと痛感した夏でした。
(2008年 8月)
 
ふたりの友情は、永遠に不滅☆

『ふたりはきょうも』
アーノルド・ローベル(作) 
三木 卓(訳)
文化出版局
 
【内容紹介】
かえる君とがま君は大の仲よし、今日も穏やかでほほえましいひとときを過ごします。ほのぼのとした二人の日常、ちょっとのぞいてみませんか。

今月は雨の季節の使者、カエルの登場する絵本です。この絵本シリーズのひとつ『ふたりはともだち』は、小学校の教科書にも採用されているので、懐かしいと感じる方も多いと思います。
有名な”かえる君とがま君”ですが、『ふたりはともだち』以外にもお話があることをご存じでしょうか。かえる君とがま君シリーズは、今回紹介した『ふたりはきょうも』以外に『ふたりはいつも』『ふたりはいっしょ』など、全部で4冊あります。

しっかり者のかえる君と、ちょっと子どもっぽい所がご愛敬のがま君。どの本も、かえる君とがま君の互いを思いやる素敵な友情が描かれており、和むこと請け合いです。今回紹介した『ふたりはきょうも』の中では、凧あげをする「たこ」というお話と、「ひとりきり」というお話が特にオススメです。互いに信頼しあい、必要としている関係に、友達っていいなぁと思わずつぶやいてしまいます。
(2008年 6月)
 
母は、強し!!

『流れる星は生きている』 
藤原 てい
中央公論新社
 
【内容紹介】
昭和20年8月9日ソ連参戦の夜、満州新京の観象台(気象台)官舎。夫と引き裂かれた妻と3人の子どもたちの、言語を絶する脱出行がはじまった。過酷な状況に耐えて生き抜いた一人の女性の、満州からの引揚げを描いた苦難と愛情の記録。

この本は、作家・新田次郎氏の妻であり、ベストセラー『国家の品格』の藤原正彦氏の母である、藤原ていさんが書いた、まさに壮絶としか言いようのないノンフィクションです。
ていさんは、夫と離ればなれになり、生まれて間もない乳飲み子を含めた3人の子どもを抱え、たった一人で苦難に立ち向かって行きます。彼女をここまでたくましくさせたのは、生きていくためにはキレイ事を言ってはいられない現実と、やはり3人の子ども達の存在でした。子どものためなら母親は、プライドをかなぐり捨ててでも強くなれるものだと、当たり前のことかもしれませんが改めて感じました。
また、みな自分達が生きることに必死になり、同じ日本人であっても助け合うどころか利己主義に走るような状況の中で、戦争で日本に苦しめられたはずの朝鮮の人々が差し伸べた救いの手が、とても尊く感じられ、印象的でした。
(2008年 5月)
 
桜の花の咲く頃に、あなたがくれた、春のかたみ。

『小説・秒速5センチメートル』
 新海 誠 
 メディアファクトリー
 
【内容紹介】
小学校卒業と同時に離ればなれになった貴樹(たかき)と明里。手紙のやりとりはあるものの、お互いへの想いをつのらせたまま、時だけが過ぎていった。そんなある日、ついに貴樹は明里に会いに行くが…。
ひとりの少年を軸に、大人になってゆくなかでの恋心を描いた、「桜花抄」、「コスモナウト」、表題作「秒速5センチメートル」の全3話からなる連作短編集。

秒速、5センチメートル。
これは、桜が舞い散る速さだそうです。今ではもうすっかり葉桜となってしまった本校の桜並木ですが、今年も優雅に舞いながら、私たちに春を告げてくれました。今月は、過ぎ去った春を偲んでこの本を紹介したいと思います。
桜の花びらが舞うさまは、幻想的で美しく、それでいてとても儚いイメージがあります。この作品もそんな桜のように、ふわりと優しくて少し悲しい恋心を描いています。切なく苦しい場面もあったけれども、読み終わったとき思わず微笑みたくなるような、そんな作品でした。興味のある方は、映画と合わせてご覧になってはいかがでしょうか。
(2008年 4月)
 
真(まこと)の恋は、心と心…。

ちくま日本文学全集「泉鏡花」より
『天守物語(てんしゅ ものがたり)』
泉 鏡花(いずみ きょうか)
筑摩書房
 
【内容紹介】
時は封建時代。白鷺(しらさぎ)城の天守第五重には、美しく気高きあやかし(妖怪)富姫と、魔性の侍女たちがいた。ある日、ここ100年来、生ある者が来たことがない天守へと、ひとりの若き鷹匠(たかじょう)、姫川図書之助(ひめかわ ずしょのすけ)がやってくる。富姫は彼と出会い、恋に落ちる…。

泉鏡花。初めてこの名を目にした時、なんとロマンチックな名前と感心した覚えがあります。
別名、畠芋之助(はたけ いものすけ)。何だかイメージが…。
あれから、幾星霜。改めて作品を読んでみると、不思議な魅力をたたえた本作品のとりこになりました。本作品は、戯曲とあってか他作品に比べると非常に読みやすく、また登場人物に、薄(すすき)や撫子(なでしこ)といった草花の名前が使われており、風雅な趣をかもし出しています。
今回の、「真の恋は、心と心…」という言葉は、本文中より頂きました。この台詞は、「お望みとあらば、姫様の容色(きりょう)と力を持ってすれば、無理にでも彼(図書之助)を天守に留めることができるでしょう」という、侍女のお伺いに対する富姫の答えです。容色や力で無理強いをするのではなく、心が惹かれ合ってこそ、という恋の真理は、いつの代も永遠に変わることはないのではないでしょうか。     (2008.3月)
 
私にふさわしいのは…!?

『けものたちのないしょ話』中国民話選
君島 久子 編訳
(岩波書店)
 
【内容紹介】
主人公はとっても美人と評判の“ネズミ美人”。そんな彼女もお年頃になり、お婿さんを探すことに。ただ単に同じ種族から選ぶのではなく、広い世界の中から自分にふさわしい相手を選びたいという。さてさて、彼女にふさわしいお相手は…?

この本は、全部で27編収録されており、日本の昔話や「シンデレラ」などの童話にそっくりの話も登場します。今回は、そのうちの「ネズミ美人」を紹介します。この話は、日本のおとぎ話「ねずみの嫁入り」にとても良く似ています。違うところと言えば、お婿さん探しをヒロイン自らやってのけるところでしょうか。このネズミ美人さん、自分のことを“美人”と名乗っていたり、「私にふさわしい相手を探しているの」と言ったりする口ぶりから察するに、大層勝気な性格なようです。そんな彼女は、お婿さん候補が自分にふさわしくないと知ると、あっさり次の人へと。強気だなぁと思うと同時に、自分から相手を積極的に探すところに好感を覚えました。そうです、みなさん。彼女のように、理想に向かって前進あるのみです!
(2008.1月)
 

クリスマスソングが流れる街で…。

短編集『つめたいよるに』
江國 香織 
(新潮社)

 
わたしの大好きな、大好きなデュークが死んでしまった。デュークはたまご料理と梨と落語が好きで、とってもキスのうまい犬だった。デュークが死んだ次の日、わたしは電車の中である男の子とめぐり逢う…。

今回はクリスマスにまつわる話をと思い、江國さんの短編集『つめたいよるに』の中から「デューク」を紹介します。この本を読んだのはもう5年も前になりますが、中でもこの物語が一番印象深かったことを今でも覚えています。ほんのりあったかくて、ロマンティックなこの「デューク」、犬好きの人はもちろん、ペットを飼ったことがある人、そうでない人すべてにオススメしたい作品です。
(2007.12月)
 
突撃!世界の晩ご飯!?

『地球の食卓 世界24か国の家族のごはん』
ピーター・メンツェル+フェイス・ダルージオ   
(TOTO出版)
 
図書室から見える銀杏の木が見事な黄金色に色づいたと思いきや、季節はもう冬を迎えようとしています。
みなさん、食欲の秋は心おきなく満喫できましたか?今月ご紹介するのは、食べ物がおいしいこの季節にぴったりの本です。

食べ物は、未来を作る大切なもの。この本は、世界24か国、30家族の1週間分の食材600食とその家族の写真を収めた写真集です。「あの国の人たちはこんなものを食べているのか!」という大きな驚きと、世界の食卓がいっぱい詰まっています。国や家族が違えば、食べるものや量も多種多様。食に関するその国の事情やわが家のレシピなども知ることができ、世界の広さ、日本の豊さを改めて実感することができます。
それにしても、1週間分の食材を目の当たりにすると、これだけの食べ物に生かされているという重さを改めて感じました。
(2007.11月)
 
かぐや姫って実は…。
『竹取物語 (全)』
角川書店 編
(角川書店)
 
空気が澄み、月の美しさが一層引き立つ季節になりました。思わず見上げた夜空にぽっかり浮かぶお月さまを見つけると、何だか無性に嬉しくなります。今月は、そんな月にまつわる有名なお話、かぐや姫の「竹取物語」を紹介します。

今月はあまりにポピュラーなお話のため、内容紹介は省略いたします。
角川書店が発行しているこの「ビギナーズ・クラシックス」はその名の通り、とても分かりやすく、古典の“コ”の字も覚えていなくても楽しく読み進めていくことができます。まず、竹取の翁(おきな)を“竹取のじいさん”と訳しているあたりに、親しみを持ってしまいました。この本を読んだおかげで、私の中のかぐや姫のイメージはガラリと変わってしまいました。全然おしとやかじゃないです。子どもの頃、読んだことがあったはずなのですが、ここまでとは…。
 
その罪の重さは…。

『ぼくのメジャースプーン』
辻村 深月
(講談社)
 
日中はまだまだ夏の暑さが残っていますが、朝晩はめっきり過ごしやすくなり、秋の訪れを感じるようになってきました。さて今回は、夏休み中に読んだ本のなかから一番印象に残った本を紹介したいと思います。

【内容紹介】
主人公は、不思議な力を持つ小学4年生の「ぼく」。ある日、学校で飼われていたうさぎが何者かに殺されるという事件が起きる。事件の第一発見者となった幼なじみの「ふみちゃん」は、ショックのあまり全ての感情を封じ込めてしまう。笑わなくなってしまった彼女を助けたい「ぼく」は、自分と同じ力を持つ「先生」のもとへ通い、犯人に与える罰の重さを計りはじめる…。

この物語は、彼の持つ力が鍵となっていることは言うまでもありません。大切な人を傷つけられ、犯人を憎んでいる彼が最後に選ぶ答えは何だろうと、ドキドキしながら読みました。これほど深く、一人の人間の犯した罪に対して掘り下げている作品は、滅多にないのではないでしょうか。彼の「ふみちゃん」への痛いくらいの想いに、思わず同調してしまい、涙があふれそうになりました。
少々重たい内容ですが、久々に読み応えのある本に出逢えたと思えたので、紹介させていただきました。
(2007.9月)
 
夢か、現(うつつ)か、幻か…。

『夢十夜』
夏目 漱石
(新潮社)
 
梅雨明けも間近になり、夏の暑さを日々感じるようになってきました。今月は、まだ真夏にはちょっと早いですが、“真夏の夜のユメ”として明治の文豪、夏目漱石の作品を紹介します。漱石といえば、誰もが一度は耳にしたことがある有名な大作家。『坊ちゃん』などに比べるとあまり知られていないこの『夢十夜』、もしかしたら映画「ユメ十夜」で知っている方もいるかもしれませんね。

【内容紹介】
人間の無意識からなる、夢をテーマに描かれたあやしくゆらめく不思議な世界。
今宵の夢はいかがなものか…。あなたをいざなう十の夢。

この作品は、多くが「こんな夢をみた」からはじまる10編の夢のお話。
短編ですが何度も読みたくなる奥深い内容です。敷居が高いと思われがちな明治文学の中で、比較的読みやすい部類に入るのではないでしょうか。美しく幻想的な第一夜、思わず背筋が凍る第三夜、切なく悲しい第九夜など描かれている夢は多種多様。驚愕のラストの第五夜も印象深いものがありました。あなたが魅せられるのはいつの夜(よ)の夢になりましょう。(2007.07月)
 
それは秘密。二人だけの、永遠の秘密。

『秘密』
東野 圭吾
文芸春秋
 
色とりどりの紫陽花が美しく咲く、雨の季節がやってきました。
今月の作品は、「お父さん」をテーマに選びました。高知県出身の女優・広末涼子さん主演で映画化もされているのでご存じの方も多いことでしょう。

【内容紹介】
最愛の妻と娘が事故に……。
妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった…。

東野さんは、本作のほかにも『白夜行』『手紙』など多くの作品が映像化されている人気作家です。個人的には第134回直木賞受賞の『容疑者Xの献身』がお気に入りですが、この『秘密』もとても切なくなる作品だと思います。ラストでは、思わずタイトルの意味をかみしめてしまいました。お父さんの気持ちを思うと、涙があふれてくる方もいるかもしれません。
さて、そこにはどんな秘密が待っているのでしょうか。それはもちろん、秘密です。
 
勉強よりも素敵で大切なことって?

『ぼくは勉強ができない』
山田 詠美
新潮社

 
さわやかな風が吹きわたる5月ももう半ばです。5月と言えば、ゴールデンウィークと母の日です。そこで今回は、素敵なお母さんが登場する本をご紹介したいと思います。

【内容紹介】
17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪い。クールでまっすぐな秀美くんが、時に悩み活躍する高校生小説!

この小説、主人公の秀美くんが、一般的な常識や価値観に対して、まっすぐに切り返していくのが大変魅力的な作品です。会話のテンポも小気味よく、ユーモアに溢れていて楽しく読み進めていくことができます。
秀美くんは、母の「恰好いい男になるのよ」の教えのとおりに育った、実に恰好いい男の子。モテモテなのもよく分かります。こんな秀美くんをおじいさんと一緒に育てたお母さんは、明るく前向き、恋多き女性で、母としてはもちろん、自立した一人の女性としてもしっかり生きている人です。自分の好きな人に食べさせるサラダを秀美くんに作らせたり、大食いの息子が食欲をなくしているというのに、「恐いわあ。うちのエンゲル係数が低くなるなんて気味悪いわあ」と言ってのけたりします。
おちゃらけているようだけれど、ちゃんと秀美くんのことをいつも想っている、実に素敵なお母さんなのです。なにより高校生の息子に、「もう年増の域に入っているけど、とても綺麗でお洒落だ」と思わせることができるなんてすごい!!子どもにとって、いつまでも魅力的な母親って憧れですよね。
 
あなたの優しい花も、きっと…。
『花さき山』
斎藤 隆介(作)
滝 平二郎(絵)
岩崎書店
 
校内の木々もすっかり桜色になり、やさしい風がふくたびにしみじみ春を感じるようになりました。
春といえば、色とりどりの花が咲き乱れ、私たちの目をおおいに楽しませてくれる季節です。
そこで今回は、どんな色鮮やかな花にも負けない、素敵なお花の話をご紹介したいと思います。

【内容紹介】
ある日、山菜採りに山に登った『あや』は、見たこともないような美しい花がいちめんに咲いている場所へと迷いこんでしまった。そこで出会った山ンば(やまんば)の話によると、この美しい花が咲くには、わけがあると言う。そのわけとは…。

とても有名な絵本なので、ご存じの方も多いことでしょう。
かく言う私も、子どもの頃にこの絵本を読みました。いまでも大好きな絵本のひとつです。
殺伐とした世の中だからこそ、人を想う気持ちを大切にしたい。そんな思いでご紹介させていただきました。
 
☆こんな出逢いができたなら…。
『あなたはそこに』
谷川 俊太郎 (詩)
田中 渉 (絵)
マガジンハウス 
 
2月と言えば、やはりバレンタインデー!そこで今回はベタですけれども、恋にまつわる本をご紹介したいと思います。

【内容紹介】
この作品は、谷川俊太郎さんの詩に『天国の本屋』のイラストを描いている田中渉さんがさし絵をつけたものです。詩集ではなく、一編の詩のみが収録されています。誰かを想う気持ちがぎゅっとつまった、とても切なくなる詩です。世界でいちばん短い恋愛小説という看板に、偽りなしです。どうぞ手にとって確かめてみてください。
 
☆友達っていいな…と思える本!
『つきのふね』
森 絵都
講談社(角川文庫もあります)
 
まぶしかった日差しもすっかり和らぎ、美しい月夜を愛でる季節となりました。今回は、月にまつわるお話をご紹介したいと思います。

【内容紹介】
時は世紀末。14歳のさくらは、親友の梨利との関係がギクシャクして以来、ある事件がきっかけで知り合った智さんの部屋に入り浸っている。智さんには、少し変わったところがあり、地球が滅亡する前に全人類を乗せて飛び立つための宇宙船を設計している。梨利とさくらを仲直りさせようと奔走する勝田くんや街で相次ぐ放火事件。そして、徐々に現実離れしてゆく智さんは…。

読み終わったとき、友達っていいな、と思える作品です。特に、ラストの「つゆ木くん」へあてた手紙は、言葉にならない想いで胸がいっぱいになりました。誰かにとって、とうといものになれたなら、これほど幸せなことはないのに。そう思わずにはいられませんでした。
 
『ささらさや』
加納 朋子  幻冬舎
 
 風薫る、緑あざやかな季節となりました。今回は、そんな「さわやかな風」を感じるこの季節にぴったりの作品をご紹介したいと思います。
突然の事故で夫を失ったサヤ。忘れ形見となったユウ坊を連れ、彼女は夫の家族から逃げるように佐々良の町へとやって来た。そんなサヤのまわりには不思議な事件が次々と起こる。サヤがピンチに陥る度、亡き夫が他人の姿(体)を借りて助けに現われる。あの風の音とともに…。
この作品は、ゴーストになった夫とサヤの切なく愛しい日々、そしてサヤ親子と佐々良の人々との交流を描くミステリー小説です。頼りなかったサヤの母親としての成長、サヤを取り巻く個性的で魅力的な登場人物など魅力満載です。ちなみにこの作品、ハードカバー版のカバーイラストにちょっとした仕掛けがあります。それは見てのお楽しみ、です。
なお、本作品には、『ささらさや』から一年後の佐々良の町を描いた『てるてるあした』という姉妹編の作品があります。主人公はサヤではありませんが、この作品もオススメです。『てるてるあした』はこの春(2006年4月)からテレビ朝日系でドラマ化されています。残念ながら高知では今のところ見ることはできませんが、興味がある方は原作と合わせてご覧になってください。
 
『SILENT NIGHT』
吉村和敏*石田衣良 小学館
 
12月に入り、街はクリスマス一色です。街中に花が咲いたように華やぐクリスマス。何だか見ているこっちまで楽しくなりますよね。今回ご紹介する本は、そんなクリスマスの彩りに花をそえる一冊です。
 この本は、吉村和敏さんが撮影した美しいクリスマスの光景に、石田衣良さんが書き下ろした3篇のクリスマス物語が合わさってできています。キャッチコピーの「透明であたたかなクリスマスブック」とはよく言ったもので、一点のくすみもなく澄みきった吉村さんの写真と、同じく透明感あふれる石田さんの文章が織りなす世界に、見ているこちらの気持ちまで透き通っていくようです。石田さんによる、クリスマスにまつわる3つの短編集も素敵ですし、吉村さんの写真も思わず「はっ」とするほど美しいので、ぜひぜひ多くの人に、その目で美しさを味わっていただきたいと思います。
クリスマスにぴったりなこの一冊、あなたのクリスマスを彩るのに一役買わせてはいただけないでしょうか。
 
『約束』
石田衣良 角川書店
 
親友を突然失った男の子は心に深い傷を負ってしまう、不登校を続ける少年と廃品回収車の老人、仕事を抱えながら女手ひとつで育てた息子を襲った思いがけない病ノ。「かけがえのないものをなくしても、人はいつか自分の人生に帰るときがくる。さまざまな喪失によって止まってしまった時間が、再び流れ出すときを描く連作」と作者が言っているように、苦しみや悲しみから立ちあがり、前を向いて歩き出す人の姿に心を打たれます。読んでいると涙がぽろりと頬に流れる短篇集です。
 
『葉桜の季節に君を想うということ』
歌野晶午 文藝春秋
 
今までに本を読んで、「えっ!なに!?あっ!!騙された」という思いをしたことはありますか?この本の主人公は自称"何でもやってやろう屋"の成瀬将虎。ある日、地下鉄の駅で女性が線路に飛び込み、偶然居合わせた将虎は彼女を助ける。数日後、後輩と知り合いの女性から、蓬莱倶楽部という霊感商法詐欺会社による保険金詐欺殺人の調査が持ち込まれた。という内容です。本とは不思議なもので読んでいるうちに登場人物を勝手に想像し、こういう感じの人だと思い込みながら読んでしまうものです。普通のミステリー小説に思わせおいて、最後で自分が勝手に固定概念を持って読み進んでいたことを思い知らされるそんな本です。騙され具合も不快ではなく心地良い騙され方で、時間があればあの厚い本をもう一度最初から読み直してみたいとさえ思えてきます。「絶対に騙されない!」と自信のある方ぜひ一度挑戦してみて下さい。
 
「夏の庭」
湯本香樹実・著 新潮社
 
毎年コスモスの花を見るたびに、思い出す一冊の本があります。それは「夏の庭」という本です。小学六年生のぼく(木山)と山下、河辺の三人の少年と、ひとり暮らしの老人との,一夏のかけがえのない交流を描いた物語です。人の死について実感を持つことができない三人は人の死ぬ瞬間を見てみたいと思う。古い小さな木造の家に、一人住む老人がもうすぐ死ぬのではないかといううわさを聞きつけ、老人を見張ることにする。観察と尾行を開始。しかしおじいさんは、弱るどころか反対に、張り切り、かえって元気になっていく。洗濯物干し、ゴミ出し、庭の草取りの手伝いなどをさせられたことがきっかけになり、三人の少年と老人との間に奇妙な友情が芽生える。草取りを終えた夏の庭に、コスモスの種を皆で、蒔く。そして八月の末、サッカー合宿から帰った三人は、おじいさんに会いに行くが・・・。秋、おじいさんの家の庭にはコスモスがいっぱいに花開く。
親子関係で子供なりに彼らはそれぞれ悩みを抱えているが、少年達の親の世代を一つ飛び越えた祖父の世代の老人から、少年達はいろいろなことを学んで成長していく。その後、少年の一人の河辺は「もし、おじいさんだったらなんて言うかな」と考えるようになる。ぼくも。山下は、夜中に一人でトイレに行くことをもうこわがらない。その山下が叫んで言った言葉が心に残る。そして作者も「あとがき」で述べているように私たちは、「あの世の知り合い」に見守られながら生活しているのかもしれません。物語の終盤は、特に感動的です。おすすめの本です。
 
『FLY,DADDY,FLY』
金城一紀 講談社
 
この作品は前作『レボリューションNo.3』で女子校の学校祭を襲撃したオチコボレ男子高校生たち「ザ・ゾンビーズ」のメンバーがさえない父親・鈴木一(はじめ)を鍛え自分のひとり娘にケガを負わせた男に復讐をさせる手助けをするというストーリー。40代後半の平凡なサラリーマンの中年男が家族の崩壊を必死に食いとめようともがきながら目標に向かって進んでいく姿がとても素敵で感動的です。痛快な青春小説で読み出したら止まらなくなります。お父さんの誕生日プレゼントにこの本を送ってみるのも良いかと思います。もしあなたのお父さんがこの本を読んで感動したら、翌日から体を鍛え始めているかも!?
 
『さよなら、ソニヤ』
アンジェロ・ロメオ・著
山内絵里香・訳 求龍堂
 
ソニヤと夫である筆者との、信頼と愛に満ちたこのカップルの生き方に感動します。でも避けられない死が二人を分かつ。亡き妻ソニヤとの想い出を、言葉で描くことで、ソニヤをよみがえらせようとしたのがこの本。ホロコースト(ドイツのヒトラーひきいるナチス政権によるユダヤ人大虐殺))を生きぬいた、過酷な過去を持つソニヤは、写真家となり、その後の生を、命を、かけがえのないものとして、まわりの人々に愛情を与えながら精一杯生きるのだった。私たちはソニヤというすばらしい女性に出会え、感銘を受ける。書中に掲載されている写真も優しくあたたかくほのぼのとして、見る者の心にしみいる。
が同時に、ホロコーストの残虐さ、戦争のもとでの人間の狂気を、あらためて思い知られ慄然とさせられる。
この本と共に『ハンナのかばん―アウシュビッツからのメッセージ』(カレン・レビン著 石岡史子・訳 ポプラ社)、『チェロを弾く少女アニタ―アウシュビッツを生き抜いた少女の手記』(アニタ・ラスカー・ウォルフィッシュ・著 藤島淳一・訳 原書房)もあわせておすすめします。いずれも子どもや少女の身の上に実際にあったことがらです。平和な時代に生まれ育ち、未来を生きる若いみなさんにぜひ読んでほしい本です。
 

1月号(2005年01月24日高知中央高等学校図書発行)
9月号 (2004年09月16日 高知中央高校図書室発行)
7月号 (2004年07月09日 高知中央高校図書室発行)
 
 
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